近本光司はなぜWAR芸人と呼ばれるのか

近本光司選手が「WAR(ウォー)芸人」と呼ばれるのは、決して彼が面白いギャグを連発するからではありません。

**「客観的な指標(WAR)で見ると、球界トップクラスの凄まじい貢献度を叩き出しているのに、一般的な表彰や派手な打撃タイトルに恵まれにくい」**という、データと現実のギャップがあまりに極端であることをファンが面白がって(あるいは自虐的に)呼んでいる愛称です。

WAR(Wins Above Replacement)は、打撃・走塁・守備を総合して「その選手がどれだけチームの勝利を上積みしたか」を示す指標です。

守備と走塁の高さ: 近本選手はセンターの守備範囲が非常に広く、走塁技術も高いため、打率や本塁打数以上にWARが高くなります。

リーグ1位の常連: シーズンによっては、三冠王を争うようなスラッガーを抑えて、セ・リーグの野手1位のWARを記録することもあります。

年度WARリーグ順位主なタイトル
20194.75位盗塁王
20205.71位盗塁王
20215.53位最多安打、B9
20225.52位盗塁王、B9
20236.41位盗塁王、日本シリーズMVP、B9、GG
20244.64位盗塁王、B9、GG
20255.84位盗塁王、B9、GG

近本選手はデビュー以来、毎年「リーグTOP5」に入る貢献度を維持し続けています。これほど高い水準でWARを量産し続ける選手はNPB史上でも稀有であり、今や「芸人」というよりは、**「WARの申し子」**として球界の基準となっています。

何故こんなにWARが高いのか①打撃編

1. 「アウトにならない」能力の高さ

野球において最もチームの勝利に貢献するのは「アウトにならないこと」です。近本選手はここがズバ抜けています。

高い出塁率: 打率が.280前後であっても、フォアボールをしっかり選べるため、出塁率は常に.340〜.350を超えてきます。

初球からの積極性と対応力: 追い込まれる前、追い込まれた後、どちらでも高いコンタクト率(空振りの少なさ)を誇り、簡単に三振して攻撃の流れを切ることがありません。

2. 「実質、二塁打」を量産する単打

近本選手のシングルヒットは、他の選手のヒットよりも価値が高いとデータ上評価されます。

盗塁の脅威: 出塁した瞬間に「走るぞ」とプレッシャーをかけるため、相手ピッチャーの集中力を削ぎます。

進塁能力: 自分が打つだけでなく、後続のヒット1本で一塁から一気に三塁へ陥れる走塁センスがあります。

wOBA(得点貢献度): 本塁打は少ないですが、安打・四球・盗塁を組み合わせた総合的な「得点創出能力」で見ると、実は長距離砲に近いレベルの貢献度を叩き出しています。

3. 「一番打者」としての効率性(wRC+)

打撃の総合指標にwRC+(リーグ平均を100としたとき、その打者がどれだけ得点を生み出したか)というものがあります。

• 近本選手は例年、この数値が120〜130前後を記録します。

• これは「平均的な打者より20〜30%多く得点を作り出している」ことを意味します。

• 一番打者は1試合で回ってくる打席数が最も多いため、この「平均以上の効率」を多くの打席で発揮することが、積もり積もって大きなWAR(勝利貢献度)に繋がっています。

一言でいうと?

近本選手の打撃面での貢献は、**「ヒットの質を、足の速さと選球眼で『長打級の価値』に変換し続けていること」**にあります。

「ホームランは少ないけれど、実質的には30本打っているスラッガーと同じくらいチームを勝たせている」というのが、データから見た近本選手の正体です。

何故こんなにWARが高いのが②守備編

近本選手のWARが異常に高くなる最大の要因であり、ファンが「もはや変態的」と称賛するのが、その**「広大な守備範囲」**です。

打撃が「コツコツ稼ぐ」スタイルなのに対し、守備は**「相手のヒットを無効化して失点を防ぐ」**ことで、ホームラン数本分に匹敵する価値を叩き出しています。

1. 守備指標「UZR」で見る凄さ

WARを算出する際、守備評価には**UZR(Ultimate Zone Rating)**という指標がよく使われます。これは「同じポジションの平均的な選手に比べて、どれだけ失点を防いだか」を数値化したものです。

近本選手の凄み: センターとして年間で「+15〜+20」程度の数値を叩き出すことがあります。

価値の換算: セイバーメトリクスでは、およそ10点防ぐ=1勝の価値とされます。つまり、近本選手は守備だけでチームに「2勝分」近い貯金をもたらしている計算になります。

2. なぜ守備でそんなに稼げるのか?(WARが高くなる要因)

WARが高くなる理由は、単に「エラーをしない」からではありません。

「守備範囲(RngR)」の広さ: 近本選手の最大の特徴です。他のセンターなら諦めるようなフェンス際や左右のライン際の打球を、俊足と最短ルートの走りで追いついてアウトにします。

ヒットをアウトに変える=相手の出塁を阻止+失点確率を激減させる

• これが打撃の「ヒット1本」と同等、あるいはそれ以上の加点対象になります。

何故WARがこんなに高いのか③走塁編

近本選手の走塁は、単に「足が速い」という次元を超えた**「走塁の芸術家」**とも言える領域にあります。

WARを押し上げる要因となる走塁の凄さを、具体的な指標を使って解説します。

1. 盗塁の「質」を示す指標:盗塁成功率

盗塁王を何度も獲得している近本選手ですが、特筆すべきはその成功率です。

損益分岐点は75%: セイバーメトリクスの世界では、盗塁成功率が約75%を下回ると、失敗によるアウトの不利益が成功の利益を上回り、チームにとって「マイナス」になると言われています。

近本選手の凄み: 彼は例年85%〜90%近い成功率を記録します。「走ればほぼセーフ」という確信がある場面でしか走らない、極めて知的な盗塁スタイルです。これにより、WARの中の「走塁利得」が効率よく積み上がります。

2. ベースランニングの貢献度:UBR (Ultimate Base Running)

盗塁以外の走塁(安打での進塁、タッチアップ、暴投での進塁など)を数値化したのがUBRです。

「ヒット1本で一気に三塁へ」: 近本選手は外野手の肩や打球の勢いを瞬時に判断し、果敢に次の塁を狙います。

指標への影響: UZR(守備)やwOBA(打撃)と同様、このUBRでもプラスを稼ぎます。「シングルヒットを実質二塁打にする」「内野ゴロの間に生還する」といったプレーが、WARの算出において「得点期待値を高めた」と評価されるのです。

まとめ

なぜ首位打者や本塁打王のような主要タイトルのない近本選手のWARがここまで優れているのか

①空振りが少なく、出塁率が高い上に盗塁もできるので特典貢献度が高い。

②リーグ屈指の守備範囲で大幅なプラスを稼ぐ。守備だけで2勝分チームにプラスをもたらす。センターという普段の大きいポジションを守っていることで更にプラス。

③高い盗塁成功率&走塁技術の高さでプラス

④これら全てを、「1番センター」という打席数も守備機会も多い環境で、怪我にる長期離脱もなくフルに発揮する。

う〜ん、改めて書くととんでもない選手ですね!

近本選手のような「ド派手なタイトルはなくても、無事之名馬(ぶじこれめいば)で長く確実にチームに貢献する選手」をキチンと評価してくれるのも、指標の面白いところです。

こらからも、指標を用いた選手解説記事をアップロードしていきます!

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